■ 植菌材の産卵セットが適しているクワガタは?
■ 産卵セットにおすすめの植菌材
■ 植菌材を自作する方法
クワガタの飼育をしていると、挑戦してみたくなるのが「産卵」ですよね。今回の記事ではクワガタ向けの産卵セットの作り方を紹介していきます。
特に植菌材を使った産卵セットにフォーカスしています。タランドゥスオオツヤクワガタやレギウスオオツヤクワガタ、オウゴンオニクワガタ、その他にも小型のドルクス属(オオクワガタ属)や一部のノコギリクワガタなどにも実践頂けるのが植菌材を使った産卵セットです。
この記事を読む事でセットの組み方、注意点、適用できるクワガタの種類がわかりますので是非読んでみてください。
※7分ほどで読めます。
Contents
植菌材ってどんな材?
植菌材とは、クヌギやコナラなど広葉樹の朽木材にキノコ菌糸を人工的に植え付け(植菌した)、菌糸を朽木全体に回した材です。
クワガタ種の産卵セットに大変適しており、良い結果が得られる事が多いです。
植菌材に使われるキノコ菌糸は主に下記の種類の菌糸となります。
■ マンネンタケ(レイシ)菌糸
■ ニクウスバタケ菌糸
■ オオヒラタケ菌糸
主に流通しているのはカワラ材とレイシ材です。
これから植菌材を使った産卵セットに挑戦する場合は、流通の面から考えてカワラ材かレイシ材を選択することをおすすめします。
植菌材の産卵セットが適している主なクワガタ種
②レギウスオオツヤクワガタ
③各種オウゴンオニクワガタ属
④各種オオクワガタ属(ドルクス属)
⑤その他(ミラビリスノコギリなど)
メインになるのは①~③ですが、植菌材を使った産卵セットは④のドルクス属(オオクワガタ属)にもかなり有効です。ただ、セットの組み方が①〜③向けとは少し違いますので注意が必要です。また、その他の特殊なクワガタにも有効という報告もあります。
植菌材の産卵セットで準備するもの
では産卵セットを組むにあたり準備するものを紹介します。
準備するものは非常にシンプルです。
植菌材
まずは植菌材を用意しましょう。前述していますが、カワラ材あるいはレイシ材が流通が多く入手し易いです。
植菌材はその性質上、どうしても品質に差が出ます。材の太さや柔らかさ、菌糸の周り具合などが1本1本違うのです。
飼育に慣れてくると植菌材の品質についても目利きが出来るようになってきます。ですが初心者の方には判断が難しいと思いますので、あまり細かい事は気にせずに色々な材を入手して試していってみてください。
底に敷くマット
次にセットに使うマットを準備しましょう。マットの選び方はセットの組み方によって選択が変わります。
また、セットの方法はセットを組むクワガタの種類によって違ってきます。
転がしセットの場合のマット
材をマットの上に転がすだけのセットでは、針葉樹の生体管理マットを用意しましょう。
品質などにも特に拘る必要もなく、有り合わせのものでOKです。
埋め込みセットの場合のマット
材を埋め込む組み方をする場合には、針葉樹系のマットは避けて埋め込み用のマットを準備しましょう。
広葉樹ベースの昆虫マットであれば何でも大丈夫です。インターネットでもいつでも買えますのでサクッと用意しちゃいましょう。
ケース
植菌材がある程度余裕を持って入るサイズのケースを選びましょう。
私の環境ではクリアスライダーという製品の大サイズを使っています。他のケースを使う事もありますが、取り扱いのし易さもありクリアスライダーをメインで使っています。
気になる方向けにリンク貼っておきます。
植菌材の産卵セットの組み方
それでは具体的なセットの組み方を解説していきます。とは言え、特別に難しい事はありませんので安心してください。
転がしセット
まずは転がしセットです。転がしセットは、名前のまま材を転がすだけのセット方法です。
樹皮を剥くか剥かないかについてはどちらでも大丈夫です。
私は樹皮は向いてセットして、足場としてケース内に置いたりもしています。
この方法は産卵材に潜っていって産卵するタイプのクワガタ種に使える方法になります。
具体的には、オオツヤクワガタ属(タランドゥス、レギウス)とオウゴンオニクワガタ属(ババ、モセリ、ローゼンベルグ)に最適です。
潜って産卵するタイプのクワガタ種には逆に材を埋め込まない方が良いことを覚えておきましょう。
埋め込みセット
続いては埋め込みセットです。埋め込みセットは材の7割くらいをマットで埋め込む組み方です。こちらも特別難しい事はありません。
以下の手順で組んでいきましょう。
→クワガタ種によって加水具合の好みが違いますので、調整が必要です。まずは少し乾燥してるくらいを意識した加水をしてみましょう。植菌材は水分を多く含んでいるケースが多いためです。
(ⅱ)ケース底に2~3センチほど固めにマットを詰める。
ケースの底にマットを少し固めに詰めていきましょう。大体2~3センチくらいを目安に詰めていきましょう。
(ⅲ)植菌材をマットの上に置いて周りをマットで固める。
植菌材(加水は不要)をマットの上において、その周囲にマットをどんどん詰めていきましょう。
ここはそれほど固く詰めなくても大丈夫です。
※埋め込みセットの場合は樹皮を剥いてセットすると、最後に成虫用の足場として樹皮をセッティングできるのでおすすめです。
埋め込みセットはドルクス属(オオクワガタ属)向けにセットする時に有効です。私の環境ではデレリクトゥスコクワやドンキエルコクワなどの種類でこの方法を使っています。
セットを組んでからのポイント
セットを組んでからはゼリー交換のタイミングで材の様子を観察してみましょう。
転がしセットの場合、材を削ったカスが大量に出ていればほぼ間違いなく産卵しています。
埋め込みセットの場合は産卵してるかどうかの判断は難しいのですが、やはり材を削った形跡が見られる場合には産卵してる可能性が高いです。
温度
産卵セットでの温度は非常に大切です。温度が合ってないと♀の産卵スイッチが入らない事があります。
産卵の兆候が見られない場合には、温度に少し変化をつけてみましょう。
温度の付け方は飼育する種類によって違います。
湿度
温度も大切ですが、湿度にも気を配って管理していくと良い結果が得られます。
植菌材は菌糸が呼吸をする事でケース内は非常に湿度が高くなります。コバエを防止するために通気を殺してるケースの場合、ケース内部の湿度が高くなり過ぎてしまう事がありますので注意してみましょう。
このような状態になると、♀が産卵しない場合もありますので注意が必要です。ケースの蓋を少し開ける、床材として敷いてるマットに加水しない、といった工夫をする事でケース内の湿度を下げる事ができます。
あまり焦らないこと
♀を産卵セットに投入したらあまり焦らずに様子を見ましょう。
すぐに産卵する個体もいればしばらくの間、産卵しない個体もいます。まずは1ヶ月ほど様子を見て、産んでないようであれば対策を考えていきましょう。
セットを割り出す時のポイント
無事に産卵していれば次の工程は割り出しになります。クワカブブリードの醍醐味ですね。
割り出しは下記の点に注意していくと良い結果が得られると思います。
卵で割り出さない
卵で割り出している方や、飼育記事を多く見かけますが個人的には慣れていない人ほど幼虫になってから割り出した方がいいと考えています。
卵の管理は思ったより難しく、カビが生えてしまったり萎んでしまったりするリスクが高いです。また、無事に孵化しても、孵化したばかりの幼虫は非常に弱く、高添加のエサを与えると死んでしまう事もあります。
そこで、オススメなのがある程度幼虫が成長してからの割り出しです。具体的には空豆くらいの大きさです。
ある程度成長した幼虫は新しい菌糸などに移しても死亡する確率がグッと下がります。
また、割り出しの時の幼虫・卵の見逃し、誤って潰してしまうというリスクも回避できます。
初心者の方ほど焦って割り出すのはやめましょう。
材を少し指で崩して見ます。ボロボロと崩れる様であれば幼虫が材を食べ進めて成長している証拠ですので、そのまま割り出していきましょう。材が崩れない場合はもう少し放置して様子を見ます。
柔らかくなっている材は手だけで十分に割る事が可能で、上写真のように幼虫を確認する事ができます。
植菌材を自作する方法
植菌材を使った産卵セットでは高品質の材を入手できるかどうかがポイントですが、自分で作ってしまう方法もあります。
自分で作る事で品質の安定化を狙えますし、欲しい時に買えなくて困るという事態を回避できます。
ここでは実際に私がカワラの植菌材を作った方法を解説していきます。
もちろん私の環境では、下記方法で作成した植菌カワラ材での産卵実績もありますので安心して試してみてください。
用意する物
(ⅰ)材
なるべく芯のないものを選びましょう、クヌギ・コナラ・エノキなどの中から使ってみたい種類を選択します。
(ⅱ)カワラ菌糸ブロック
カワラの菌糸ブロックを用意します。オススメは「大夢K」のブロックで、流通量も多く品質も安定しています。
(ⅲ)ジップロック
材が2〜3本ほど入るジップロックの袋を用意します。
手順
<手順①>
材を加水します。加水し過ぎに注意しましょう。
水を張ったケースに材を沈めて30分くらい放置すれば十分です。
加水が終わったら陰干しで少し水気を切りつつ、樹皮を全て剥がします。
<手順②>
菌糸ブロックを崩します。ボトルに詰める際には粒子が細かくなるまで崩しますが、植菌材を作る場合はもう少し適当で大丈夫です。
<手順③>
崩したブロックと材をジップロックに入れます。この時、材に崩した菌糸チップをなすりつけるように、刷り込んでいきましょう。
ジップロックに詰めたら、ジップロックに穴を開けてタイベストシールなどを貼っておきましょう。
あとは菌糸が回るのをじっくり待ちましょう。
3ヶ月ほど経過してから使うと良い感じに仕上がっていると思います。管理してる温度によって菌糸の回る速度も変化しますので、ご自身の飼育部屋の環境を見つつ菌糸の周り具合を観察してみてください。
管理温度は25度を超えない様にしましょう。
ぜひ植菌材の自作にも挑戦してみてください。
まとめ
最後に本記事の内容を箇条書きで纏めておきます。
■ 植菌材への産卵が適した種類を見極めて使用すること。
■ 植菌材は流通が多くないので、自作する方法もある。
今回は以上となります。
最後までお読み頂きありがとうございました。